出生前診断の目的や種類を解説!~赤ちゃんの未来

出生前診断の目的や種類を解説!~赤ちゃんの未来

出生前診断を知っていますか?

「出生前診断」

この言葉を聞いたことがありますか?妊娠すると目にするようになる言葉ではないでしょうか。
読み方は「しゅっせいぜんしんだん」「しゅっしょうまえしんだん」「しゅっしょうぜんしんだん」と様々です。

出生前診断には歴史とともに進化しており、約40年前に羊水検査が導入されてから、1990年代後半から母体血清マーカー検査が実施されるようになりました。
そして2013年には新型の出生前診断「母体血胎児染色体検査(NIPT)」が始まりました。

妊娠すると赤ちゃんとの幸せな将来を想像して心を躍らせる一方で「赤ちゃんに何か障害があったら、、、」などと考えてしまう人も多いでしょう。

出生前診断を受けることには賛否両論あります。ですが、出生前診断の内容や検査を受けるメリット、デメリットを把握することによって本来の目的を理解することができるのです。
出生前診断をすることによって、どんなことがわかるの?みんな受けた方がいいの?
ぜひ妊婦さんに知っておいてほしいことをまとめました。

ちなみに出生前診断は医療費控除の対象になると思いますか?
出生前診断は胎児に何か異常が発見されたとしても、治療につながるわけではなく、検査を受ける受けないも妊婦さんの任意なので、医療費控除の対象とはなりません。

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出生前診断の目的とは

出生前診断の目的とは

まず「出生前診断」について解説していきます。

出生前診断とはダウン症候群などの染色体疾患や先天性の病気を調べる検査です。
出産前に赤ちゃんの状態を知って、分娩時期や、産後に育てていく環境を準備しておくことが出生前診断の本来の目的なのです。
検査を受ける前に赤ちゃんに障害や病気があるのではないかと、不安に感じることもあるかもしれませんが、その可能性を調べることにはリスクを伴うこともあるので、出生前診断を受ける前には、パートナーとよく話しあっておくことが大切です。
また妊婦検診の際に超音波検査の結果で気になることがあれば、より詳しい検査していくことになるでしょう。
よって、出生前診断は誰もが無関係ではないと考えられます。

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検査には染色体疾患の可能性を判断する非確定検査として「母体血清マーカー検査(クアトロテスト)」「胎児超音波検査」「母体血胎児染色体検査(NIPT)」といった種類があり、これらの検査結果で病気の可能性が高いという結果が出た場合、「羊水検査」「絨毛検査」といった精度の高い確定検査を受けることができます。

ではこれらの検査をそれぞれ詳しく解説していきます。

母体血胎児染色体検査(NIPT)

母体血胎児染色体検査(NIPT)

2013年から日本でも実施が可能になった新型出生前診断「母体血胎児染色体検査(NIPT)」。
精度は高いけど、流産や破水などのリスクがある羊水検査や絨毛検査。こういったリスクがある検査をする前にチェックできるのがこの新型の出生前診断です。

妊婦さんの腕から採血し、血液中に浮いているDNAの断片を分析することによって、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトウ症候群)の染色体異常の可能性を検査します。
検査後、結果が陽性であれば確定検査の為に羊水検査や絨毛検査が必要になってくるのです。

www.ncchd.go.jp

母体血胎児染色体検査(NIPT)はパートナーと一緒に遺伝カウンセリングを受けることが必須条件となっているのですが、
染色体の仕組みや、対象となる疾患、生まれた子供がどんな人生を送っていくのかといった説明を受けます。
必ずパートナーと一緒にカウンセリングを受けて話を進めます。
ちなみに母体血胎児染色体検査(NIPT)を受けるのには35歳以上という条件があります。
年齢が低い20代ぐらいだと、本当は陰性であるのに、検査結果が間違って陽性と出るなど検査が正確にできない可能性があるからです。

費用は病院によって違いますが約15万円程です。

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胎児超音波検査(胎児超音波スクリーニング検査)

胎児超音波検査(胎児超音波スクリーニング検査)

妊娠するとみなさん妊婦健診を受けますよね。妊婦検診ではエコー検査が実施されます。
このエコー検査は胎児超音波検査とも呼ばれ、これも出生前診断のうちのひとつであることを知っていましたか?

通常の妊婦検診でのエコー検査は、赤ちゃんの心拍確認や、赤ちゃんの向き、羊水の量、胎盤の位置や赤ちゃんの発育具合などを行い、すべての妊婦さんに実施される検査です。
そして出生前診断として通常のエコー検査とは別で、より詳しいエコー検査は妊婦さんから希望があった場合に行われ心臓や腎臓の病気があるかを検査します。
通常のエコー検査をしているときに偶然赤ちゃんに異常が発見されることもあり得ます。
しかしエコー検査ではわかる異常がある程度限られているので、実際に産まれてくれるまで診断が確定できない場合もあります。

母体血清マーカー検査(クアトロ検査)

母体血清マーカー検査(クアトロ検査)

母体血清マーカー検査とは、妊婦さんの血液検査を行い、赤ちゃんまたは胎盤で作られる成分(AFP、hCG、uE3、Inhibin A)を測定する検査です。
この4つの成分に、妊婦さんの年齢や妊娠週数、日本人の基準値などを加えて、赤ちゃんが対象の疾患である①ダウン症候群 ②18トリソミー ③開放性神経管奇形にかかっている確率を算定します。

検査時期は妊娠15週~17週ごろまで行うことができます。
約2万例の調査では、スクリーニング陽性の結果が約9%で、その中で実際にダウン症候群であったのは約2%であったという報告があります。

クアトロ検査は採血だけなので検査の危険性は特にありません。
検査の料金は約3万円です。

あくまでスクリーニング検査ですので、赤ちゃんの異常は判定することができません。
(スクリーニングとは「ふるいにかける」という意味です)

羊水検査

羊水検査

お腹の赤ちゃんは羊水に包まれ成長していきます。
羊水中には、成長していく過程で赤ちゃんから剥がれ落ちた皮膚や粘膜の細胞が含まれています。
その胎児由来の細胞を培養し、染色体や遺伝子を調べることができるのです。

検査方法
  1. エコー検査で赤ちゃんの状態を確認します。具体的には赤ちゃんの発育や心拍動だったり、羊水の量が正常で胎盤の位置が注射器で刺したときに妨げにならないかを確認します。
  2. 妊婦さんのお腹を消毒した後に、エコーで見ながら、おへその下あたりに細い針を刺して、羊水を約20ml採取します。
    これを羊水穿刺と呼びます。痛みは病院の先生の技術によって違いますが、ほとんどの人が痛みは感じません。
  3. 針を刺した場所をしばらくガーゼで圧迫し、出血がなければ絆創膏などを貼付します。
  4. エコーで再度赤ちゃんに異常がないかを確認します。
  5. 15~30分程度病院で安静にし、経過をみて異常がなければそのまま帰宅できます。

検査結果は2~3週間程度で判明します。
病院によっては、必要である場合には一部分の染色体の数的な異常を調べるFISH法という迅速法を行うことがあります。

検査を受けることができる時期

羊水検査はいつから受けることができるのでしょうか。

妊娠初期は羊水の量が少なく、隙間も少ないため穿刺するのが難しく、また流産する確率が高くなるので実施されることはほとんどありません。
ですので羊水検査を実施する時期は、羊水の量や羊水中の細胞の数、赤ちゃんの安全性、羊水中の細胞の培養期間、異常があった場合の対処(妊婦さんとパートナーの染色体検査、遺伝カウンセリング、妊娠の中断)を考慮し、妊娠15週から17週ごろになることが多いです。

羊水検査の費用

絨毛検査、羊水検査ともに料金は10万円~15万円ぐらいが相場です。
保険適応がなく全額自己負担です。
費用は病院によって違うことが多いので、羊水検査を検討しているのであれば一度病院に確認しておくといいでしょう。

すぐに終了する検査とは言え、少なからず妊婦さんにも赤ちゃんにもストレスがかかる検査なので、検査前日、検査後はゆっくりと過ごすことをおすすめします。

羊水検査は誰にでも受けることができる検査だと思われがちですが、赤ちゃんの未来についてとても重要な検査であるため受けるためには条件があります。

  1. 高齢出産である:最近では結婚年齢が高くなり、それに伴い出産する年齢も高くなってきている傾向にあります。しかし高齢での出産にリスクはつきものです。赤ちゃんや自分達の生活を考えて、病院の先生から勧められたときに受けられる場合が多くなります。
  2. 妊婦さんもしくはパートナーのどちらかに染色体異常がある:どちらかに染色体異常がある場合、遺伝する可能性があるとされているので、検査を受ける条件にあてはまります。
  3. 染色体異常の赤ちゃんを妊娠・出産した経験がある:染色体異常の赤ちゃんを過去に妊娠・出産した経験がある場合、次の妊娠でも可能性が高くなるとされているので、条件にあてはまります。

流産の可能性について

流産の可能性について

羊水検査は羊水を採取するため子宮に針を刺すので、羊膜(赤ちゃんを覆っている膜のこと)にわずかですが穴が開いてしまいます。
この小さな穴から羊水が漏れ出してしまった場合、早産や感染症が引き起こされる可能性があるのです。
その他に、羊膜に針を刺したことによって刺激を受けた子宮が収縮し、流産や早産の確率が高くなるといわれています。
なお、流産の原因は、一概に羊水検査が全てであるとは言い切れません。
羊水検査による流産や死産の可能性は約300分の1であるといわれています。
羊水検査はエコーで確認しながら、赤ちゃんの様子を観察し実施されます。
ごく稀ですが、羊水検査中に赤ちゃんが動いてしまい、穿刺した針に触れることによって、赤ちゃんの体を傷つけてしまうことがあります。
また赤ちゃんが双子のように多胎児であった場合、それぞれの羊水を摂取するためすべての赤ちゃんの羊水が採取できなかったり、さらにリスクは高くなります。

妊婦さんの合併症の可能性について

流産のほかにも母体の合併症のリスクがあります。

  • 破水
  • 出血
  • 子宮内感染
  • 穿刺針によって血管や腸管が傷つけられる母体障害
  • 羊水塞栓症(羊水検査をすることにより、大量の羊水などが妊婦さんの血液中に流れ込んでしまい、呼吸困難などを引き起こす母体障害)

絨毛検査

絨毛検査

絨毛検査とは、妊娠初期の胎盤の一部である「絨毛」を取り出して、染色体や遺伝子の疾患を調べる検査です。
検査方法は、はじめにエコーで赤ちゃんの発育状態や、明らかな異常があるかどうかを調べ、胎盤の位置を確認します。

絨毛検査には二つの方法があり、胎盤の位置によって①経腹法か②経腟法が実施されます。
経腹法は、腹壁を通して絨毛のサンプルを採取する方法です。経腟法は鉗子を使い膣~子宮頸管を通して採取する方法です。
絨毛検査では赤ちゃんの染色体異常や遺伝子疾患を診断することができ、妊娠10週~13週ごろに行うことができます。

絨毛検査は羊水検査と同じようなリスクがありますが、羊水検査より早い時期に行うことができ、採取できる胎児の細胞の量が多いというメリットがあります。
しかし羊水検査より検査に高い技術が必要とされるため、実施している施設が限られてきます。

www.genetech.co.jp

染色体とは

染色体とは

そもそも染色体とは何でしょうか。
人間の体には小さな細胞が集まってできていて、それぞれの細胞の中に親から受け継いだ染色体があります。
染色体には人間の設計図のような遺伝情報が含まれており、赤ちゃんは染色体を両親から23本ずつ受け継いでいきます。
したがって、人間は2本で1対となった染色体を23対、つまり合計46本持っています。
23対のうち1対は性別を決める性染色体で、X染色体が2本あれば女性、X染色体とY染色体が1本ずつあれば男性です。
羊水検査では性別の判定も可能です。

性染色体以外の染色体は常染色体と呼ばれています。

染色体異常(染色体疾患)とは?

染色体異常(染色体疾患)とは?

「染色体異常(疾患)」についてどの程度知っていますか?

「羊水検査をするとダウン症候群かどうかがわかる」という知識を持っている人が多いのではないでしょうか。
染色体異常にはダウン症候群以外にもいくつか疾患があります。

染色体異常とは、染色体の量に変化が生じることで、赤ちゃんの先天性の疾患や体質の原因となることです。
2対の染色体がまるごと1本増えていても産まれる可能性が残っているのは、13番と18番、21番染色体だけです。

  • 13トリソミー(パトウ症候群)13番目の染色体が1本多く、出産に至るのは4%で96%は死産・流産することが多いのが特徴です。
  • 18トリソミー(エドワーズ症候群)18番目の染色体が1本多く、ほとんどの場合流産になるといわれています。
  • 21トリソミー(ダウン症候群)21番目の染色体が1本多く、顔つきが特徴的で、筋力が弱かったり、発達障害などがあります。心臓や肺に合併症を伴うこともあります。

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赤ちゃんの未来

赤ちゃんの未来

6年前に新型出生診断「母体血胎児染色体検査(NIPT)」が始まってから、メディアでも多数取り上げられ、中絶率が高くなり賛否両論が起こっています。
高齢出産が増え、最近の出産の傾向として親が極端に二つに分かれていると言われています。
一方では「妊娠するチャンスが減っているからこそ、また高齢であるからこそ完璧な赤ちゃんを望む。」
もう一方では、「赤ちゃんは、せっかくの授かりものなのだから、どんな障害があろうとも受け入れる。」
高齢出産には様々なリスクが伴います。それは妊婦さんだけではなく、お腹の赤ちゃんにもいえることです。

アメリカの医学誌に掲載された研究結果によれば、「40歳で妊娠した女性の子どもがダウン症候群である確率はおよそ100分の1と、20歳での出産に比べて12~16倍も高かった。」ということです。
ダウン症候群をはじめとする染色体異常は、35歳を過ぎると確率がぐんと上がります。

検査を受けるか受けないか、産むのか中絶するのか、、、。とても難しい選択をしなければならない場合もあります。
今まさに検査を受けようかと迷っている妊婦さんもいるのではないでしょうか。
いろんな人のブログをチェックしてみるのもいいかもしれません。

母体血胎児染色体検査(NIPT)は妊婦さんへの負担が少ない採血によって検査することができ、結果の精度もとても高い検査です。
検査の値段は約20万円と高額ですが、現状ではこれまで約5万組以上の夫婦が検査を受け、いまもなお受ける割合が高くなっている検査ではあります。

この検査で陽性の結果が出た場合、もっと精度の高い検査を受けるために「羊水検査」が必要になってきます。

出生前診断には「命の選別」ではないかという批判もあります。
染色体異常という結果を受けて出産に至った人は、わずか3%という調査結果が出ています。
もちろんその中には流産してしまった場合もありますが、大勢の人が陽性という結果が出た場合中絶することを選んでいるのです。
これは染色体異常の子どもがどのように生きていくのか、どういう風に生活するのかをよく知らないということが不安にさせるという問題点があるからです。

けれども障害は染色体異常だけではありません。出生前診断を受けてもわからない、自閉症のように産まれてこなければわからない障害もあれば、後天的に重度の障害を負うこともあります。
産まれてくる命とどのように向き合うべきなのか。
子供を持とうと思った段階で、情報を集めてよく考え、パートナーときちんと話し合っておくことが大切です。

ダウン症候群の子供を育てて思うこと

ダウン症候群の子供を育てて思うこと

少し筆者自身のお話をさせてください。
筆者には子供が3人います。一番上の子は小学6年生のダウン症候群の男の子です。
妊娠したのが20代だったため、出生前診断を受けるという考えは全くありませんでした。
妊婦検診でも何も異常はなく、出産予定日の2週間前に破水し、赤ちゃんの心拍が低下したという理由で緊急帝王切開での出産になりました。

退院してからはとにかく落ち込み、泣き、荒れました。
なんで私が?という思いでいっぱいいっぱいでした。
もちろん可愛いという思いが大半を占めていましたけどね。

少しずつ気持ちが落ち着いてきたのは、生後半年を過ぎて療育施設に通い出してからです。
同じダウン症候群の子供を持つ友達ができた、これが大きいと思います。

今この私の生活から考えると、出生前診断で陽性が出たからといって中絶することはあり得ないことなのですが、それは実際に産んで育てているからであって、見たことも接したこともない障害がある子供を育てるという決断をするのはとても難しいことです。

出生前診断で陽性が出た人に「ダウン症候群の子、かわいいよ!絶対産むべきだよ。」とは言えません。
可愛いだけでは子供は育てることはできません。成長のスピードはそれぞれ違うし、筆者も将来のことを考えると気が重くなることがあります。

上記にも書いたように、産まれてきてわかる障害もたくさんあります。
出生前診断で陽性が出たとして、産むにしても中絶するにしても、とにかく情報をたくさん集めてください。
産むのであれば、その子を受け入れる決意をしてください。
健康な子を産んだとしても子育てが順調にいくわけではありません。
たくさん悩んで、同じ境遇の人の話を聞いて、救われ、安心し、家族とよく話し合ってから結論を出してほしいです。

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