妊娠中のカフェイン摂取量には注意しましょう!

妊娠中のカフェイン

妊娠が分かったら気を付けることは、バランスの良い食事を摂ること、カフェインを摂りすぎないこと、喫煙や飲酒をしないこと、加熱していない食べ物をなるべくたべないこと、身体を冷やさないこと、激しい運動を控えることなどがあります。

妊娠中は、カフェイン摂取を控えた方がいいとよく言われますが、どうしてなんでしょうか。
コーヒーや紅茶が嗜好品の方は、妊娠が分かった途端、いきなり飲んではいけないとなるとストレスになりますよね。
カフェインとは、そもそもどんなものなのか、カフェインは何にどのくらい含まれているのか、妊娠中の母体に胎児にどのような影響を及ぼすのか、妊婦さんや授乳中のママの1日のカフェインの摂取量の目安をご紹介します。

カフェインの作用

カフェインの作用

カフェインとは、アルカロイドという化学物質のひとつです。コーヒー豆、茶葉、カカオ豆、ガラナなどに天然に含まれています。
国や食生活によって、カフェインの摂取量には差があります。おおむね、飲み物としてコーヒーやお茶から取ることが多いです。

カフェインには次のような作用があります。
まず、脳や延髄などの中枢交感神経系を興奮させる働きがあります。感覚受容や精神機能を高め、眠気や疲労を除外し、運動機能を高めることができます。
骨格筋に対しては、疲労感をおさえ、活動性を増大させます。心臓には、心筋に直接作用し収縮力、拍出量を増加させます。
カフェインを摂取したあと3~5時間程度は、腎臓の血管が拡張し血流量を増加させ利尿作用があります。
ほかにも、体脂肪を燃やす基礎代謝促進作用、胃の消化活動を助ける胃酸分泌促進作用、カルシウムの放出を促す作用、血管拡張作用があります。

覚醒作用や解熱鎮痛作用は、眠気、頭痛に対する効果がある医薬品としても使用されています。

覚醒作用があるので集中力を高める反面、アドレナリンを放出させることによりリラックス効果があるため、仕事中や、眠気を覚ましたいとき、疲労がたまったとき、コーヒーが飲みたくなるのは、体がカフェインを覚えていて、気持ちを切り替えてリフレッシュできるからでしょう。

様々な効果があり、薬としても使われているカフェインですが、副作用もあります。
代表的なものは、不眠の原因になる、手が震える、胃が荒れることが挙げられます。
カフェインの覚醒作用は、脳の中枢神経を興奮させて体に無理をさせている状態なので、カフェインの作用が切れると頭痛や集中力の低下や疲労感などが起こります。
一度にカフェインを摂りすぎると急性中毒になります。脈拍数の増加、呼吸数の増加、胸痛、めまい、興奮、不安、震え、不眠、また消化器官が刺激されて下痢や吐き気、嘔吐が起こります。
リラックス効果とは真逆のつらい症状に苦しむのがカフェイン中毒です。

健康な成人の1日のカフェイン適正量は400㎎まで、1回の摂取量が200㎎を超えないようにするべきとされています。

ここ数年、カフェイン中毒で救急搬送される方が急増しています。
コーヒーだと1時間以内に9杯でほぼ急性中毒になり、40杯ほど飲むと致死量に近づくとされています。コーヒーを一度にそんなに飲む人はいないと思いますが、最近では栄養ドリンク・エナジードリンクや眠気覚まし用のカフェイン錠剤が出回っており、短時間に一気に服用すると危険です。栄養ドリンクは「医薬部外品」ですが、エナジードリンクは「清涼飲料水」に分類されています。飲むときには成分表示を確認し安全に飲める量を考えましょう。

カフェインの力を借りて集中力を高めたり眠気を覚ますことは「元気の前借り」などと言われます
体力の絶対量をふやすものではなく、使った分は後から疲労として返ってきます。カフェインは耐性が付きやすく、同じ効果を得ようとして量が増えていく傾向があり、摂取量の増加がエスカレートしてカフェイン錠剤を常用するようになり、急性カフェイン中毒で運ばれる人が増えているのです。

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カフェインは何に含まれているのか?

カフェインは何に含まれるのか?

カフェインといえば、コーヒーを思い浮かべますが、コーヒーのカップ1杯150㎖あたりは約60~120㎎程度の量のカフェインが含まれています。
コーヒーにも、インスタントコーヒーやドリップコーヒーなど作り方やメーカーによって含有量が変わってきます。
カフェインが含まれている飲み物は、コーヒーだけではありません。
紅茶もカフェインの含有量が多い飲み物と言われています。紅茶の場合も、抽出の時間や方法によってカフェイン量は変わってきますが、1杯150㎖あたり約30~80㎎程の量が含まれています。
お茶にはカフェインが含まれているものと含まれていないものがあります。お茶の中でも、緑茶はカフェインを含みますが、玉露は1杯150㎖あたり150~240mgと多くのカフェインが含まれています。同じ緑茶でも煎茶は30㎎、番茶は15㎎、ほうじ茶は30㎎と種類によって変わってきます。
ウーロン茶は、1杯150㎖には30~50㎎程度のカフェインが含まれています。
ココアは、原料のカカオ豆にカフェインが含まれており、ココアは1杯150㎖あたり、45㎎程度のカフェインが含まれています。
コーラは、カフェインを含むコーラナッツから抽出したコーラエキスが原料になっています。コーラー1杯150㎖あたり15㎎のカフェインが含まれています。
栄養ドリンクやエナジードリンクは、様々な種類があり、種類によって違いがあります。栄養ドリンクは100㎖サイズのものが多いので、100㎖あたり32~70㎎程度のカフェインが含まれています。エナジードリンクのなかには、缶1本あたり、コーヒー2杯分相当のカフェインを含むものもあります。
多くのアルコール飲料には、カフェインは含まれていませんが、ウーロンハイや緑茶ハイ、カルーアミルク(コーヒーリキュールを使用)にはカフェインが含まれるものとお酒を合わせるのでカフェインが含まれているということになります。

食べ物の中にもカフェインを含むものがあります。
ココア同様カカオ豆を原料としたチョコレートにもカフェインが含まれています。ブラックチョコレートには、100gあたり120㎎、ミルクチョコレートには、100gあたり30㎎含まれます。最近流行りの高カカオチョコレートはミルクチョコレートの4倍のカフェイン量というものもあります。
また、眠気覚ましで有名なブラックガムには、1枚あたり10㎎含まれます。
お菓子の中でも、コーヒーや紅茶、抹茶、チョコレートなどを使ったものはカフェインが含まれています。

薬の解熱鎮痛剤には、カフェインを含む医薬品が多いです。妊婦さんが市販の医薬品を飲む場合は医師か薬剤師さんに相談しましょう。

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妊娠中の摂取目安量

妊娠中の摂取目安量

日本では、妊婦さんのカフェイン摂取量の上限は数字では明確に定められていませんが、海外では団体によって公式に発表されています。

世界保健機構(WHO)では、カフェインの胎児への影響については、まだ確定していませんが、1日200~300㎎(コーヒー1日2~3杯)までに制限しています。
英国食品基準庁(FSA)では、妊婦がカフェインを摂り過ぎることにより、出生児が低体重となり、将来の健康リスクが高くなる可能性があるとし、妊娠した女性に対して1日あたり200㎎になるように制限しています。また、高濃度のカフェインは自然流産を引き起こす可能性があることを示す証拠があるとしています。
カナダ保険省(HC)では、カフェインを摂り過ぎると、不眠症、頭痛、イライラ感、脱水症、緊張感を引き起こすため、特に子供や妊婦、授乳中の女性に対して注意喚起を行っています。健康な成人は、一日最大 400 mg以内の摂取であれば影響はないとしています。また、子供の行動に及ぼすカフェインのリスクは高く、妊娠適齢女性の生殖に及ぼすリスクも高いことから、カフェインの悪影響が出ない一日当たりの最大摂取量について、4歳~6歳の子供は一日最大 45㎎、7歳~9歳の子供は一日最大 62.5 ㎎、10歳~12歳の子供は一日最大 85㎎、妊婦や授乳中あるいは妊娠を予定している女性は1日あたり最大300㎎までとしています。
オーストラリア保険・食品安全局では、妊婦及び授乳中の女性はカフェインの摂取を控えるよう注意喚起を行い、1日あたり300㎎を超えないように制限しました。
韓国食品医薬品安全庁(KFDA)では、カフェインの一日最大摂取量として、子供は体重 1 kg当たり 2.5㎎以下、大人は 400㎎、妊婦は300㎎としました。

アメリカの健康保険会社が、約1000人の妊娠中の女性を調査したところ、毎日のカフェイン摂取量と比例して流産の危険性が上がることがわかり、1日にカフェインを200㎎以上摂取する女性は、カフェインを摂らない女性に比べて流産する確率が2倍になることが分かったそうです。

コーヒー1杯でホッとする方もいれば、夜に眠れなくなったり、心臓がドキドキするという人もいます。妊婦さんの体型や体質によってカフェインの影響は個人差がありますが、目安として1日に100㎎以内にするとほぼ問題ないと思われますが、なるべく含有量の少ない飲み物を選んだり飲む量を控えたりしましょう。

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妊婦さんと赤ちゃんへの影響

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妊娠中のカフェインはいつからいつまで控えた方がいいかというと、妊娠が分かった妊娠初期から出産後授乳中までです。

妊娠中は、肝臓の代謝速度が低下するため、カフェインの分解と排出に時間がかかります。特に妊娠後期には代謝速度が三分の一になり、体に長く残ることになります。
そのため、体内にカフェインが留まる時間が長くなり、胎盤を通過して胎児へもカフェインが届きやすくなります。赤ちゃんは肝臓の機能が未熟なのでカフェインをうまく分解・排出できないため身体に高濃度のカフェインが溜まることになり、カフェインが発達障害を引き起こすケースもあります。

また、カフェインには血管を収縮させる作用があるため、カフェインを摂りすぎると母体から胎盤に送られる血液が減ってしまう可能性があります。血液量が減ると赤ちゃんへの酸素や栄養素が十分に渡らず低酸素状態になることがあります。妊婦さんがカフェインを摂取して血管が収縮されることでお腹が張り、早産や流産につながる可能性もあります。妊娠中期、妊娠後期、出産前後には、胎児の発育に影響を与える可能性もあります。カフェインと同時に喫煙をする習慣のある妊婦さんの場合、明らかに発育の遅れが見られ、早産の傾向も認められます。

流産や新生児の低体重リスクを低減するためにも、妊娠中はカフェイン摂取量を制限するように注意が必要とされています。
また、妊婦のカフェイン過剰摂取が胎児に影響し、乳幼児から最大8歳児までの子供の肥満の一因であるとノルウェーの公衆衛生研究所の調査報告がありました。妊娠中のカフェイン摂取量が非常に多かった女性は、摂取量が少なかった女性に比べ、子どもが1歳になるまでに成長過剰になるリスクが66%高くなることが分かったそうです。

カフェインをたくさん飲むと尿中にカルシウム排出が促されてしまいます。妊娠中は赤ちゃんの骨や歯を作るためにも、たくさんのカルシウムが必要で、カルシウムが足りなくなると母体から補うため、産後は歯や骨が弱くなってしまうことがあります。

妊娠中は、貧血になりやすいです。食事やサプリメントから鉄分を摂取し、鉄分と一緒にビタミン・葉酸も取るようにしましょう。コーヒーや緑茶、紅茶などはカフェイン以外にもタンニンというポリフェノールの一種が含まれており、タンニンは鉄分の吸収を阻害して貧血の原因になってしまいます。コーヒー・紅茶・緑茶などは、食事や鉄剤を飲む前後30分~1時間は避けましょう。

カフェインは出産後も赤ちゃんへ様々な影響を与えます。母乳育児をしているママがカフェインを多量に摂取すると、母乳に含まれるカフェインが赤ちゃんの体内で作用し、赤ちゃんが興奮したり不眠になったり落ち着きがなくなったりすることや乳児突然死症候群の発症率が増加することがわかっています。1歳になるころまでの乳幼児も、体内からのカフェイン排除能力がとても低いため、授乳中もカフェインの摂りすぎは気を付けましょう。

妊娠中におすすめのお茶やコーヒー

妊娠中におすすめのお茶やコーヒー

妊娠中や授乳中は、1日に100㎎以内のカフェイン摂取を目安にといわれても、紅茶やコーヒーが飲みたいという欲求を我慢しすぎては、かえってストレスになってしまいます。その場合は、カフェイン入りの飲み物に代わるノンカフェインのハーブティーや紅茶やコーヒーを選ぶようにしましょう。

ノンカフェインとは、本来カフェインを含んでいる飲食物からカフェインを取り除いたり、通常はカフェインを添加する飲食物にカフェインの添加を行わないことで、カフェインを含まなくなったもののことを言います。デカフェ、カフェインレス、カフェインフリーとも呼ばれます。

カフェインレスコーヒーは、元から含まれているカフェインを水や二酸化炭素などを使って取り除かれたものです。カフェインレスと言っても完全に取り除かれているわけではありませんが、カフェインは限りなく少ないため、カフェインの影響が気になる妊婦さんにおすすめです。最近では街のコーヒーショップでもカフェインレスコーヒーを取り扱っているお店が多くなってきました。自宅でも楽しめるデカフェのコーヒー豆やインスタントコーヒーもあります。
スターバックスコーヒーでは、ラテ、ソイラテ、カフェモカなどエスプレッソ系のコーヒーはすべてプラス50円でデカフェに変更できます。費用もそんなにかけずにデカフェに変更して楽しめますね。
カフェインレスコーヒーは、カフェインは取り除いていますが、タンニンは含まれるため、体内鉄分と結びつき貧血にならないように食事との時間に気を付けましょう。

たんぽぽ茶(コーヒー)は、妊娠・授乳中に不足しがちなビタミンC・B2と鉄分が含まれているノンカフェインのハーブティーです。西洋たんぽぽの根っこをローストしたものにお湯をかけて飲むと、コーヒーに似た香ばしい香りと味が楽しめるのでコーヒー派の妊婦さんにおすすめです。利尿作用があり、浮腫の解消、冷え性や便秘の改善、胃や肝臓の働きを助け、母乳の出をよくする効果もあります。

ルイボスティーは、ノンカフェイン・低タンニンのハーブティーです。ルイボスティーに含まれる亜鉛はDNAの合成にかかわり、赤ちゃんの生育に必要な栄養素ともいわれています。妊娠中に摂取できると嬉しいマグネシウムやカリウム、ポリフェノールなどのミネラル成分が多く含まれます。利尿作用、整腸作用があり、むくみや便秘を解消し、リラックス効果もあります。

黒豆茶の黒豆には、アントシアニンが含まれるほか、女性ホルモンのバランスを整える大豆イソフラボンやカルシウムやカリウムなどのミネラル、たんぱく質、ビタミンB群とEなどの栄養も豊富に含まれています。カリウムの利尿作用によりむくみの解消に効果があり、血圧も下げてくれるので、妊娠高血圧症で悩むママにおすすめです。

妊婦さんのために調合された、マタニティブレンドのハーブティーなどもあります。ノンカフェインのハーブティーでも、ジャスミンやレモングラスのように子宮を収縮させる作用があるとされ妊娠中に適さない薬理作用をもつ成分を含むものもあります。購入するときは妊娠中に避けた方がいいものが入ってないか産婦人科医やハーブ専門店に相談してみましょう。

ラズベリーリーフティーは、子宮を収縮させる作用があると言われているので、妊娠初期から中期には飲まないように気をつけてください。臨月くらいからは、子宮や骨盤周辺の筋肉をゆるめる作用があり、「出産前にとると安産になる」出産準備のハーブティーと言われています。産後の母体の回復も早めるとされ「マタニティハーブ」とも呼ばれています。

麦茶は赤ちゃんでも飲めるノンカフェインティーの代表です。ノンカフェインに加えミネラルが豊富でノンカロリーなので水分補給にピッタリな飲み物です。

自分にあうノンカフェイン飲料を色々と試してみてください。

まとめ

まとめ

カフェインには、中枢神経に刺激を与え、母体にも胎児にも肝臓や消化器官に様々な影響があるとされるので、赤ちゃんの小さな体には負担が大きく、また1日100mgを大きく上回るような過剰摂取には自然流産の可能性があるとの報告もあります。

コーヒーや紅茶を愛飲してきた妊婦さんの中には、コーヒーなどのカフェインを我慢して摂取を突然やめると頭痛や倦怠感など禁断症状が出る人もいます。
カフェイン摂取を1日100㎎以内を目安にし、1日1杯だけコーヒータイムや紅茶タイムをつくったり、マグカップを小さくして飲む量を減らしたり、薄めて飲んでみたりと工夫してみましょう。
また妊娠中はつわりがあったり、体調の変化も味の好みも変わってきます。自分に合ったカフェインレスの飲み物を探してみてください。
ストレスが多くたまりやすい妊娠生活は、カフェイン以外のリラックス方法として軽いストレッチやマッサージ、近場の旅行を取り入れてみるのもいいかもしれません。

妊娠中から授乳中まで、カフェインは適量を心がけ、徐々にカフェインを摂りすぎない生活習慣に変えていきましょう。